肩が痛い!腱板断裂?必要な検査は?専門医が解説

こんにちは。札幌市豊平区の日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会スポーツ医の合六孝広です。

中高年で肩の痛みにお困りの皆様!五十肩と思って、そのままにしてませんか?

腱板断裂かもしれません。

この記事は、以下のような人におすすめ!

・転んだ後、肩の痛みがある方

・病院でレントゲンは何ともないと言われたけど、肩の痛みが続いている人

この記事を読めば、腱板断裂の診断に必要な検査がわかります。

腱板断裂がどんな病気か知りたい方は、「肩の腱が切れた!腱板断裂とは?専門医が解説」をご覧ください。

MRI(磁気共鳴画像)検査

腱板断裂の診断で必須の検査です。

MRIで観察できるもの

レントゲンでは見ることのできない軟部組織が見えます。つまり
・腱や筋肉
・関節唇
・滑液包
・関節液
・関節包
・靱帯
・神経、血管(場合によって)
などが見えます。

腱が見えるので、腱板が断裂しているかわかります。

さらにレントゲンではわからないような初期の骨病変もわかります。例えば、早期の上腕骨の骨頭壊死という病気や骨腫瘍や癌の転移を見つけることができます。

長所

・断裂の大きさ
・腱板の筋肉の萎縮の度合い
・腱板の筋肉の脂肪化の度合い
・腱板断裂に合併する病変
が評価できます。

断裂してる状態が続いていると徐々に断裂が大きくなります。

また、腱板の筋肉部分が萎縮(痩せる)し、脂肪化していきます。

これらの程度がひどくなると手術成績が悪くなります。つまり治療の計画、手術の治療成績を予測に役立ちます。

前述のようにMRIはいろいろなものが観察できます。つまり、非常に多くの情報が一気に得られます。
そのため、いろいろな肩の病気を診断するのに非常に有用です。

短所

・すこし検査費用が高い。
・検査に時間がかかる。

診断率

・完全断裂でも診断率は90%前後
・不全断裂なら、70%弱
と言われています。

通常、腱板断裂の診断はT2強調画像という撮影条件で行います。右図の赤い矢印の白い部分が断裂部です。
腱はこの条件で黒く映るので、白い部分が本来は黒いなっていなくてはなりません。

    右肩正面図 T2強調画像

超音波(エコー)検査

腱板断裂の診療において、近年急速に普及が進んだ検査です。

超音波(エコー)検査で観察できるもの

MRIと同様に軟部組織が観察できます。腱が見えるので、腱板断裂を診断できます。

長所

MRIでは不可能な、リアルタイムに肩を動かしながらの評価できることです。

私は手術計画を立てるために手術の直前に検査してました。
1.断裂部の再評価
2.MRIだけでは、わかりにくい肩甲下筋腱(腱板の中で前にある腱)の断裂や合併している頻度の高い上腕二頭筋長頭腱の不安定症の評価です。

MRI、エコーの所見を合わせることで、より綿密な術前計画を立てることが可能となります。

短所

・腱板断裂があった場合に知りたい①筋肉の萎縮、②筋肉の脂肪化については評価するのは難しい。

・骨の下に隠れている部分、骨の中は見えない。そのため、他の病気を見逃す可能性がある。

そのため、MRIも同時に行う方がいいでしょう。

診断率

腱板断裂の診断率は、完全断裂、不全断裂ともMRIとほぼ同じくらいと報告されています。

ただ私の印象としては、皮下脂肪が厚いと画質が悪くなるのでMRIより診断率は低いと思ってます。

レントゲン検査は必要?

簡便な検査ですが、いろいろな情報が得られる検査です。肩が痛い病気は、腱板断裂だけではありません。また他の病気が同時にある場合もあります。そのため、「 肩が痛い。」という方の初診時には必須の検査です。

いろいろな病気が簡単にスクリーニングができる

レントゲンだけでわかる病気、レントゲンの方がわかりやすい病気もあります。例えば
・ずれている骨折
・石灰沈着性腱板炎(腱板に石灰ができる病気)
・変形性肩関節症(肩関節の軟骨がすり減る病気)
・骨腫瘍
などです。
骨の形態、石灰、骨と骨との位置関係などを見るには、非常に有用な検査です。

骨の強度がある程度わかる

骨粗鬆症の有無について、ある程度評価できます。

中高年に多い病気なので、骨粗しょう症になっている方が多いです。つまり骨密度が低下して、骨の強度が低下しています。
また腱板断裂があると断裂している部分の骨に刺激が加わりません。結果として、その部分が骨粗しょう症になってきます。

手術が必要になった場合、骨にアンカーというものを打ち込みます。骨の強度を予測しておくことは重要です。

まとめ

1.腱板断裂の診断には、レントゲン、MRIを行うことが多いです。なぜなら、この二つの検査でいろいろな肩の病気の診断が、多くの場合可能だからです。さらに超音波検査を行うこともあります。
2.それぞれの検査には長所、短所があるので、組み合わせて行うことが重要です。それにより、病気の状態が詳しくわかり、より良い治療が可能となります。

今後、腱板断裂の自然経過や治療方法に関する記事を書いていく予定です。ぜひご覧ください。

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