肩が痛い!治らない!本当に五十肩?専門医が解説

こんにちは、札幌市豊平区の日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会スポーツ医の合六孝広です。

肩の痛みでお悩みの40代、50代、60代の皆様!

五十肩と思って、そのままにしていませんか?この記事では、40代、50代、60代で頻度の高い肩の疾患名を紹介したいと思います。

この記事は以下のような人におすすめ!

・ 40代、50代、60代で肩が痛い人

・ 五十肩と言われたけど、なかなか治らない人

・ 他の肩の病名を知りたい人

私は、小さなクリニック、都市の小規模病院、地方の中核病院、大都市の大病院といろいろな規模の医療機関で外来をした経験があります。ざっくりとした私の印象に基づくものですが、頻度の高いと思う病気をランキング形式で解説していきます。その他の肩の痛みを引き起こす病気も説明しようと思います。

病気を理解するために必要な肩の解剖

これから、病名を理解するのに必要な簡単な肩の解剖を解説します。

  1. 肩関節は、上腕骨の上腕骨頭⇔肩甲骨の関節窩が対面しています。
  2. 上腕骨頭と関節窩の間を関節包(緑の線 )が包んでいます。
  3. 関節包の前方、上方、後方を覆うように腱板があります。
  4. 肩甲骨の一部である肩峰が、腱板の上を覆っています。
  5. 肩峰腱板の間に肩峰下滑液包(ピンクの線 ー )があります。
  6. 鎖骨と肩峰の間で肩鎖関節を作ります。

図:右肩を正面から見た断面図

40代、50代、60代で多い肩の病気ランキング

 五十肩

やはりこの病気、「 五十肩 」が一番多い病気です。「 凍結肩 」、「一次性拘縮肩」とも言います。拘縮とは、関節の動きが悪くなることです。

どのような病気かと言うと、まず関節包が炎症を起こします。その後、関節包の肥厚と線維化を起こす病気です。リハビリや薬の内服、注射で治ることが多いのですが、治らない方もいます。病気の経過は、かなり個人差のある病気です。

 腱板断裂

肩の大事な組織である腱板が断裂を起こす病気です。五十肩と思って放置して、重症化してから病院を受診する方がしばしばいます。特に転倒して肩を強打してから痛い、転倒しそうになり手を着いてから肩が痛い、というような人は可能性が高い病気です。ただし、ケガがなくても断裂します。年齢が高くなるほど、自然に断裂している割合が高くなります。

まずは薬の内服、注射、リハビリをすることが多い病気ですが、重症化してから手術すると治療成績が低下します。

 石灰沈着性腱板炎

腱板に石灰が沈着する病気です。
腕を上げたり、捻ったりするときの鈍痛程度から、全く腕があげられないほどの痛みが出ることもあります。

まずは手術しない治療(保存治療)を行います。その一つとして、薬の内服や肩峰下滑液包(腱板の表面)への注射があります。ただし、石灰は腱板の中にあることがほとんどです。そのため、前記治療で治らないことが結構あります。したがって、少し痛みを伴いますが石灰穿刺、体外衝撃波治療などの保存治療も行われています。

その他に肩痛を引き起こす病気

・変形性肩関節症 
~肩関節の軟骨がすり減る病気です。

・肩鎖関節炎   
~肩鎖関節が炎症を起こす病気です。

上腕二頭筋長頭腱炎、上腕二頭筋長頭腱断裂
~肘を曲げる筋肉の一つ、上腕二頭筋長頭が上腕骨の溝の部分で炎症または断裂を起こす病気です。

・肩甲上神経障害 
~腱板の働きや肩関節の感覚を支配する肩甲上神経が障害される病気です。いろいろな原因はありますが、傍関節唇のう腫という腫瘤が原因のことが多いです。

・頸椎神経障害
~首の第5番目、6番目の神経根が障害されると肩甲上部と上腕外側に痛みが出ることが多いです。頸椎椎間板ヘルニア、変形性頸椎症などが原因で神経が障害されます。

・関節リウマチ
~免疫異常によって、関節内の滑膜という組織が異常増殖して関節に炎症を起こす病気です。

その他にも稀ですが、いろいろな病気があります。今回は省略します。

番外編

ドクターG
ドクターG

今回、あえて2つの病名をランキングに入れませんでした。
・二次性拘縮肩
・肩峰下インピンジメント症候群

です。

二次性拘縮肩とは、もともと肩の病気があり、そのせいで肩が拘縮する病気です。動きの制限が軽度なものも含めると、かなりの頻度で二次性拘縮肩になっています。

肩峰下インピンジメントとは、肩峰の下面に腱板がぶつかり、擦れることです。様々な原因で肩峰下インピンジを起こし、痛みが出ている疾患群を肩峰下インピンジメント症候群と言います。
実は拘縮肩、腱板断裂、大きな石灰がある石灰性腱板炎でも、肩峰下インピンジメントが起こります。つまり、大多数の方にこの診断名がつくことになります。
また症候群という言葉が表すように曖昧な診断名です。そのため、最近では使われる頻度が減少してきてます。

上記の理由から、今回この2つの疾患名はランキングから除外しました。

まとめ

40代、50代、60代で頻度の高い病気は、1.五十肩、2.腱板断裂、3.石灰沈着性腱板炎です。
病名を知っていれば、いろいろ自分でも病気のことを調べられます。そして、病院を受診すると医師からの説明がよく理解でき、治療がスムーズにいくと思います。

今後このサイトでは、ここで紹介した病気について詳しく解説していく予定です。よろしくお願いします。

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