肩の石灰が消える?石灰穿刺法について、詳しく解説

こんにちは。札幌市豊平区の日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会スポーツ医の合六孝広です。

中高年で肩の痛みにお困りの皆様!肩の石灰が原因かもしれません。

この記事は以下のような人にお勧めです!

・病院で肩に石灰があると言われた人

・石灰沈着性腱板炎の治療をしてるけど、痛みがとれない人

この記事を読めば、石灰沈着性腱板炎で代表的な保存治療である石灰穿刺法について詳しくわかります。

石灰沈着性腱板炎が、どのような病気か詳しく知りたい方は「肩に石灰?原因、経過、なりやすい年齢は?専門医が詳しく解説」をご覧ください。

石灰穿刺(+洗浄)法とは?

石灰に針を刺すことによって、
・物理的に石灰を除去する効果
・血流を促し、石灰の吸収を促進する効果
があるとされています。

実際の方法

大きく分けて、2つの方法があります。
A:細い針(外径0.51~0.71mm)で石灰を多数回、穿刺する方法
B:太い針(外径1.26mm)を石灰に1本もしくは2本刺して、局所麻酔薬などの液体で圧をかけて洗浄、吸引を繰り返して石灰を洗浄、除去する方法

この2つの方法で治療成績に大きな差はないとされています。

私は、
腱板に対する侵襲が少ない方がいい。
 特に急性期の場合、
 ・石灰がもともと吸収されようとしている状態にある
 ・石灰が柔らかいので小さい穴をあけるだけで石灰が散っていく
②痛みが少ない方がいい
③私の経験上、石灰が固いとうまく洗浄、吸引できないことがしばしばある。
と考えているので、Aの方法を行っています。

毎回多量の石灰を洗浄、除去できた場合は、もしかすると洗浄法の方が治療成績がいいのかもしれません。現在のところ、それを厳密に比較した論文はないので何とも言えません。メリット、デメリットを考えて、どちらかが選択されているのが、現状です。

超音波(エコー)検査機器で石灰を見ながら、石灰を穿刺している

左図の説明

超音波(エコー)検査機器で見ながら、穿刺する理由

以前はレントゲン透視機器で見ながら石灰を穿刺する方法が、行われていました。
最近は、エコー検査機器で見ながら穿刺している先生が多いと思います。私自身も11年前から、エコー検査機器を使って穿刺しています。

理由は、
①石灰が吸収されやすいか、されにくいか、予測できる
②エコー像は断面の画像なので、針が確実に石灰に入っているか確認できる(レントゲンの場合は、石灰と針の前後関係がわからないので、確認できない)
③レントゲンの被爆がない
です。

①に関して、詳しく説明します。エコー像で
・石灰表面の下が白いと穿刺法をすると吸収されやすい
・石灰表面の下が黒い、つまり音響陰影のある石灰は、穿刺法を行っても吸収されにくい傾向がある
となります。

吸収されやすいタイプの石灰

左図の説明
石灰表面の下の部分が白い。石灰が柔らかいことが多く、吸収されやすい。

吸収されにくいタイプの石灰

左図の説明
石灰表面の下の部分が黒くなっている。これを音響陰影という。石灰が固いことが多く、吸収されにくい。

もちろん音響陰影のある石灰でも吸収されますが、確率が低くなります。
このことは、保存治療をどのくらいの期間するか判断するのに役立ちます。

私の治療経験

私は、急性症状と慢性症状の石灰沈着性腱板炎29例の治療結果を日本肩関節学会誌「肩関節」に2014年に報告しました。結果は、約75%の肩で石灰が1/2以下に縮小もしくは消失でした。

その時のデータを再解析すると、石灰が吸収されにくいとされる慢性症状の患者でも約61%の肩で石灰の1/2以下の縮小もしくは消失となっていました。

手術を考える前にまずは行う価値のある治療方法と思います。

また私の友人である医師2人が、ほぼ同時期にこの病気になりました。この治療を行い、痛み、石灰が消失して非常に感謝されました。もし研修医の方がこの記事を読んでいたら、同僚医師がこの病気になったとき石灰穿刺をぜひ行って下さい。非常に感謝されると思います。

まとめ

1.石灰沈着性腱板炎において、石灰穿刺(+洗浄)法は有効な治療法である。
2.エコー検査機器で見ながら穿刺するのが、主流となっている。
3.エコー像から、石灰が吸収されやすいかどうか予測ができる。

石灰沈着性腱板炎でお困りの方は、石灰穿刺法をご検討することをお勧めします。ぜひ、主治医の先生とご相談ください。

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