石灰沈着性腱板炎の症状は?専門医が解説

こんにちは。札幌の日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会スポーツ医の合六孝広です。

中高年で肩の痛みにお困りの皆様!30代から50代の肩の痛みの原因に石灰沈着性腱板炎があります。

この記事は以下のような人にお勧めです!

・病院で肩に石灰があると言われた方

・中高年で急に肩の激痛に襲われた方

・中高年で肩を上げる途中で痛みが出る方

この記事を読めば、石灰沈着性腱板炎の症状が解ります。

またこの記事を読む前に、「肩に石灰?原因、経過、なりやすい年齢は?専門医が詳しく解説」を読むと以下の内容がさらにわかりやすいと思います。ぜひご覧ください。

急性症状

石灰吸収段階の症状と考えられています。急性炎症を起こしていると言われています。そのため、

  • 激痛で肩をほとんど動かせない
  • 肩の腫脹や熱感
  • 炎症が強い場合、発熱することもある。
     
    私の友人もこの状態になりましたが、治療したときに非常に感謝されました。私はこの病気の経験がないのですが、薬を飲んでもどうにもならないくらい、とにかく痛いようです。

慢性症状

石灰形成段階や石灰形成停止段階の症状と考えられています。

1.安静時、夜間の軽度~中等度の痛み
2.肩を挙上するときの痛み(有痛弧徴候)
3.肩を内旋した時の痛み
詳しく説明していきます。

手術が必要になるような人の石灰沈着性腱板炎では、石灰周囲の腱板で
1.血管の増加
2.痛みを感じる組織(痛覚の受容体)の増加
3.慢性炎症に関係する細胞の増生
が報告されています。
このことが、痛みの原因になっていると考えられています。そのため、石灰がそれほど大きくなくても痛みが出ます。
私も内視鏡手術で石灰沈着性腱板炎の腱板を観察したとき、正常よりもたくさんの毛細血管がありました。アメリカの著名な肩関節外科医のStephen J. Snyder先生は、このような病変をstrawberry lesion(イチゴ色の病変)と言っています。

また多くの場合、石灰は腱板の中で頭側(上側)にある棘上筋に出来ます。棘上筋に大きな石灰ができた場合、正常肩と棘上筋に大きい石灰ができた場合を比較します。棘上筋と肩峰の距離が違います。石灰がある状態で腕を動かすといわゆるインピンジメントによる症状が出ます。それが有痛孤兆候や肩の内旋した時の痛みということになります。それでは、そのことについて、解説していきます

有痛弧徴候(ゆうつうこちょうこう)

腕を体の横から上げる時、60~120度のところで痛みが出る症状です。

正常でもこの角度で腱板と肩峰の下面と接触すると言われています。

大きい石灰が棘上筋にある時、ちょうどこの角度で盛り上がった腱板が、肩峰の下面に通常より強くぶつかり痛みが出ると言われています。さらに痛覚の受容体の増加が、痛みを増加させます。

肩を内旋した時の痛み

肩を内旋するとは、腕を内側に捻る運動です。
正常でも脇を開けての内旋動作では、腱板と肩峰の下面と接触すると言われています。

棘上筋に大きな石灰があると、内旋した際に腱板と肩峰の下面が強くぶつかり、有痛孤兆候と同様の機序で痛みが強く出ると考えられています。

石灰沈着性腱板炎は、必ず肩が痛い?

石灰があれば、必ず肩が痛いわけではありません。健康診断などの胸部レントゲンで偶然見つかることがよくあります。石灰のある人のうち、35~45%の人で肩の痛みがあると言われています。

痛みのある人は、前述のような理由があると思われます。

石灰があっても無症状なら治療する必要はありません。

まとめ

・石灰沈着性腱板炎には、急性症状と慢性症状がある。
・痛みの原因には、血管増加や、痛みの受容体の増加、石灰の位置、大きさが関係している。
・石灰があるからといって、必ず痛みがあるわけではない。石灰があっても、無症状なら放置しても全く問題がない。

今後、石灰沈着性腱板炎の画像診断や治療方法について解説する予定です。
ぜひ、ご覧ください。

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