こんにちは。札幌市豊平区の日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会スポーツ医の合六孝広です。
中高年で肩の痛みにお困りの皆様!肩の石灰が原因かもしれません。
この記事は以下のような人にお勧めです!
・病院で肩に石灰があると言われた人
・肩を挙げたり、捻ると痛い人
この記事を読めば、慢性期の石灰沈着性腱板炎の治療方法がわかります。
慢性期の石灰沈着性腱板炎の症状を詳しく知りたい方は、「石灰沈着性腱板炎の症状は?専門医が解説」をお読みください。
また、この記事を読む前に「肩に石灰?原因、経過、なりやすい年齢は?専門医が詳しく解説」を読むと以下の内容がさらにわかりやすいと思います。ぜひご覧ください。
慢性期の石灰沈着性腱板炎で起きていることは?
慢性期の石灰沈着性腱板炎では、石灰周囲の腱板に血管、神経組織が増加しています。そのため、安静や運動時に痛みがでます。
また、右図のように棘上筋に大きな石灰ができた場合、腱板と肩峰が強くぶつかります。これを肩峰下インピンジメントと言います。インピンジメントによって肩峰下滑液包が炎症を起こし、痛みが出ます。
治療方法
多くの場合、保存治療で良くなります。ただし保存治療で痛みが改善しない場合、手術します。
鎮痛薬の内服
痛み、炎症を抑えるために内服します。アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症剤、トラマドール・アセトアミノフェン配合錠などの内服をします。
肩峰下滑液包内へのヒアルロン酸ナトリウムやステロイドの注射
肩峰下インピンジメント症状を起こしている人は、肩峰下滑液包炎を起こしています。これらの薬は炎症を抑える作用があるので、痛みの軽減が得られます。ただし石灰に対する処置ではないので、石灰が吸収される可能性は低いです。
石灰穿刺法
石灰へ穿刺することで血流を促進して、石灰吸収が起こるようにするという治療法です。
細い針で石灰を多数回、穿刺します。
エコー下に石灰穿刺している様子
左図の説明
石灰穿刺法に関する詳しい内容は、「肩の石灰が消える?石灰穿刺法について、詳しく解説」をご覧ください。
石灰洗浄法
太い針を石灰に刺して、局所麻酔薬などの液体で圧をかけて洗浄、吸引を繰り返して石灰を除去する方法です。上記の穿刺法と同様の治療成績と言われています。もし多量の石灰が除去できれば、穿刺のみよりも良好な成績が得られるかもしれません。ただし、私の経験では石灰がチョーク状に硬いことが多いので、石灰が吸引できないことがしばしばです。
シメチジン、ファモチジンの内服
シメチジン(1日400g)、またはファモチジン(1日20㎎)を内服することで石灰が促進されたという報告があります。消炎鎮痛剤の副作用である消化器症状の予防にもなるので、一石二鳥です。
手術
手術適応について
・上記の保存治療を3~6か月行っても、痛みで困る場合に手術を行う。
・石灰があっても痛みがなければ、手術は必要ありません。
これまで、石灰があるせいで腱板断裂がしやすくなるという論文はありません。もし仮に石灰のせいで腱板断裂したとしても、その時に腱板を修復すれば全く問題ありません。
手術内容
・内視鏡(関節鏡)で行います。つまり、大きく切開をする必要はありません。
・多くの場合、石灰は腱板の中にあります。腱板を切開して、腱板の中にある石灰を切除します。
針で石灰の位置を確認後、電気メスで腱板を切開している
腱板を切開すると中から少し石灰が出てきている。
内視鏡用の匙のような器械を使って、石灰を切除している。白い石灰がたくさん舞っている。写真には写ってないが、左側に石灰を吸引している器械がある。
・石灰を切除すると腱板断裂の状態になります。そのため、腱板を修復します。
・肩峰の下面を削る手術(肩峰下除圧術)を追加する必要があるかに関しては、意見が分かれています。石灰を完全に除去できたかなど、症例ごとに判断するといいと考えます。
まとめ
- 慢性期の石灰沈着性腱板炎は、保存治療で多くの場合よくなる。
- 保存治療を行っても、痛みがある場合のみ手術適応がある。石灰があっても痛みがなければ、手術は必要ない。
- 手術は内視鏡を使って、石灰を切除する。
これからも、肩の病気に関する記事を書いていきます。ぜひ、ご覧ください。