五十肩(凍結肩)の治し方!急性期の治療を専門医が解説

こんにちは。札幌市豊平区の日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会スポーツ医の合六孝広です。

この記事はこんな人におすすめ

・病院で五十肩かもしれないと言われた人

・五十肩の痛みが改善しない人

この記事を読めば、五十肩の急性期(炎症期)の治療法がわかります。

治療の基本方針

痛みを和らげることを第一に考えます。痛いことは、極力避けるようにします
無理に動かすことは炎症が増強するので、してはいけない行為です。

実際の治療

  1. 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服、外用
  2. トラマドール・アセトアミノフェン配合錠の内服
  3. 副腎皮質ホルモン(ステロイド)の関節注射
  4. ヒアルロン酸の関節注射
  5. 三角巾の使用
  6. 寝るときの脇枕の使用
  7. 手指のグーパー運動やグリップ運動

私の治療経験も含めながら、解説していきます。

1.非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服、外用

まず初めに行うことの多い治療です。

作用     鎮痛、解熱、抗炎症作用
作用機序アラキドン酸からプロスタグランジンを産生するときに作用するシクロオキシゲナーゼ(COX)の作用を阻害する。プロスタグランジンは炎症や疼痛を引き起こす物質。つまりプロスタグランジン産生を阻害し、その効果を発揮。
治療効果ある程度の鎮痛効果が得られる。
ただし、十分な鎮痛効果が得られないことがしばしばある。
その場合、別の薬の内服、注射を組み合わせる。
代表的な薬ロキソプロフェンナトリウム水和物(ロキソニン®)、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン®)、セレコキシブ(セレコックス®)など

2.トラマドール・アセトアミノフェン配合錠の内服

NSAIDsで十分な鎮痛効果が得られない時に使用します。私は単独、またはNSAIDsと併用してます。

作用強い鎮痛作用
作用機序トラマドール
・末梢神経から脊髄、脳へと痛みを伝える神経経路で痛みをブロック
・痛みを抑制する神経経路を活性化する
アセトアミノフェン
・はっきりとした機序は不明である。
・中枢神経に作用して、鎮痛、解熱作用を発揮すると言われている。
治療効果・痛みが和らぐことが多い。NSAIDsと違い、寝る前に内服できるのも大きな利点。
・ただし、吐き気の副作用がしばしばある。
代表的な薬トラムセット®、トアラセット®

3.副腎皮質ステロイドの関節内注射

痛みが強い場合、積極的に使用を考慮すべきと考えます。

多数の論文報告があります。長期的にみると、注射の有無による成績の差はないとされています。ただし、早期に痛みが改善し、可動域の改善も早期に得られるということが証明されています

ただし、いろいろな副作用もあるので使用回数、使用間隔を考えながら行います。

ステロイド内服による治療の報告もありますが、関節内注射による治療が一般的です。

作用   強力な抗炎症作用。その他にも、多数の作用がある。
作用機序特定の遺伝子の転写を制御することで、いろいろな効果を出す。
注意点糖尿病患者では、血糖値が上昇してしまう。
代表的な薬トリアムシノロンアセトニド(ケナコルト-A®)、ベタメタゾン(リンデロン®)

私の治療方法

局所注射で持続効果のあるケナコルト-A、20mgを局所麻酔剤と一緒に関節内に注射

4.ヒアルロン酸の関節内注射

ステロイドと違い、ヒアルロン酸による重大な副作用は稀です。治療効果がある場合は、使用を考慮します。

効果    関節包の炎症抑制、線維化抑制
作用機序線維芽細胞の増殖抑制、癒着に関係する物質の遺伝子発現を抑制、炎症に関係する物質の遺伝子発現を抑制
*線維芽細胞~線維成分を盛んに産生している細胞。                
治療成績「効果がある」という報告と「効果はない」という報告がある。
代表的薬剤アルツ®

5.三角巾の使用

痛みが非常に強いときは、肩の安静のために使用します。
肩の動きが少なくなるので、痛みが和らぎます。

6.寝るときの脇枕の使用

脇に大きめの枕を挟みます。場合によっては、さらに肘下にタオルや枕をいれます。
これによって、脇を開く+肘を体より少し前に出す位置(軽度の肩屈曲+外転位)にします。
経験的に痛みが軽減する方が多いです。

7.手指のグーパー運動やグリップ運動

筋肉の萎縮予防、循環障害の予防になります。

まとめ

  1. まずは、痛みを和らげることを最優先します。
  2. いろいろな治療法があるので、それらを組み合わせて痛みを改善していきます。痛みが強いときには、トラマドール・アセトアミノフェン配合錠、副腎皮質ステロイドの関節内注射なども行います。

多くの人は、上記治療で痛みが改善します。主治医と相談しながら、焦らずに治療していきましょう。

今後、五十肩の亜急性期(炎症期から拘縮期への移行期)、慢性期(拘縮期、回復期)の治療や五十肩が治りにくい人はどんな人かなどを解説していく予定です。そちらもぜひご覧ください。

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